美術館&ギャラリーめぐり 岐阜でアート三昧の秋を。

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アートトーク 立体造形作家 高田吉朗さん  × 岐阜現代美術館 学芸員 宮崎香里さん  作家と美術空間が出会い、 生まれるもの。

10月2日まで開催中の「高田吉朗 水の記憶」。
展示室の中央には、野焼きした108の皿に小船が浮遊する『陌捌(ひゃくはち)の水』。
皿に残るひび割れと焦げがかつて潤い、水があった記憶を留める。
屋外の水上には、光に、風に、揺蕩(たゆた)う『樹環』。
不思議に心地いい、空間と作品が奏でる共鳴。
今、この場所でしか実現しない作品世界は
さて、どのようにして生まれたのか?

テーマの「水」が そのままある空間は 冒険でしたね [高田]  『樹環』/2013年

立体造形作家 高田吉朗さん
立体造形作家 高田吉朗さん
昭和58年から約3年間、ホンジュラスで青年海外協力隊に参加。現地の人々のものづくりへのエネルギーに圧倒され、表現の原点となる。大垣市在住。名古屋短期大学教授。
学芸員 宮崎香里さん
学芸員 宮崎香里さん
企画展の立案から展示までを一人で担う。作家と雑談する中で作品に潜むものを見つめ、展示空間で最大限に表現する方法を探求。関市立篠田桃紅美術空間の学芸員も兼任。

岐阜現代美術館

平成17年開館。鍋屋バイテック会社関工園内に位置する。所蔵する篠田桃紅や荒川修作の作品展示以外に、新進の美術家の企画展を年に数回行う。中央の展示室は大きな窓を配した吹き抜けの空間。作家の新たな挑戦を引き出し、鑑賞者は眺める場所や時間によって、作品のさまざまな表情を感じ取ることができる。

じわじわと感じる
水や風、重力の存在

宮崎 外の『樹環』がゆっくりと風になびき、室内に流れる空気と微妙に違いますよね。お客さんがよく、眺めていると心地よくて動けないっておっしゃるんです。
高田 『陌捌の水』と『樹環』は非常にきれいな波長を出していますね。また屋外のプールは風によって波紋が変わったり、光が差すと下に影ができたり。セッティングして初めて、見えてきました。
宮崎 ここは一般的な美術館のように白く四角い空間ではなく、ガラス面も多くて言ってみれば安定しない場所ですね。
高田 だから冒険だったし、楽しみでもあったんです。僕のテーマの一つは「水」。それも水に関わる「木」や「土」、対極にある「火」です。水がない室内があり、ガラス窓を隔てて水を湛えるプールがある。水があまりにもストレートにあったので、戸惑いました。
宮崎 「水」がテーマとは、どういうことでしょうか?
高田 僕の制作の基盤は「垂直」と「水平」で、例えば作品にも上から垂直に土が垂れているものがあります。人間や植物は水平の地面に対して垂直に伸び、そして水平に広がっていくのが「水」。また「水」は生命の源でもあります。岐阜市長良で生まれ育ったので、原風景の長良川にも繋がっています。
宮崎 プールに丸太の環を浮かべたことで、水は「水平」を形作り、「垂直」の力で形を変える性質であることが強調されています。普段、忘れていることをじわじわと、優しく感じられますね。
高田 美術作品の使命の一つに、見落としてしまうものを改めて感じさせる部分があると思うんです。水や風、空気って目に見えにくいですが重要。それらをどういう形で提示すると押しつけじゃなく、作品が置かれる空間と見る人が一体化できるのか。結果的にそうなっているとしたらうれしいです。
宮崎 ここの空間は、スロープを通して外から室内へ自然に繋がっているので、来館者は普段の感覚のまま鑑賞を始めることができる。気が付くと一空間にどっぷりと浸かることができるんですね。私にとって開錠と施錠は至極の時です。朝、人が入っていないシーンとした空気の中に作品が待っている。閉館時間には外が暗くなり、スポットライトだけが当たっています。日数を経るごとに、どんどん魅力を感じていますし、『陌捌の水』のお皿の中の土は乾いているのに、なぜか潤って見えてくるんです。


先生の作品は自然体 ずっと見ていたくなります [宮崎]  『陌捌の水』/2013年

鑑賞者と作品の
心地いい関係

高田 作品を通じて見る人は自分自身のことを考えたりするんですかね。
宮崎 作品が、見るものにそのきっかけを与えているのだと思います。
高田 日常から離れたくて、この時間を持ちたくて来る人もいるかもしれません。作品って展示すると自立して成長したり、見る人によっていろんな想いの所に飛んでいきますよね。作者は最初の鑑賞者になる訳ですが、僕が作品を通じて一番知りたいのは、自分自身。次にどんな作品に発展していくのか。それがなかなか、今回は見えてこない。
宮崎 今回の展覧会は、先生にとっては大きく揺さぶられるものだった。ある意味、美術館にとっては大成功だったということですね(笑)。
高田 そうそう、苦しみがある。僕の場合、成功とか失敗とかいうのではなく、一回の展示に恥ずかしいことも全部吐き出している気がするんです。次のことまであまり考えられない。テーマや戦う対象があると制作のエネルギーにもなりますが、そういう要素が少ない気がして。
宮崎 先生の作品にはいくつかの根源的なキーワードがあって、それらは点でありながら、どこかで繋がっている。だから時間とともに、あるいは見る人によって新しい展開が生まれてくるような気がします。制作者としての眼差しは厳しさに満ちていますが、それを全面に出さない。強い衝撃は受けないが、自然体で、もっと柔らかいものを包み込んでいるように感じます。だから見る人は覗いてみたり、腰をかけてプールの揺らぎを感じてみたり、時間をかけてもっと作品を知りたくなる。
高田 確かに僕の中で、見る人をいろんな物事に対して強制したくないんです。人間関係においても基本は自由。
宮崎 作品も関係性が持ちやすくて優しい。だから、とても心地いいんですね。お客さんの滞在時間が圧倒的に伸びている理由の一つじゃないかな。絶妙に空間を生かしていただき、大成功です。先生の悩みはよく分かりますが、私としては次にどう繋がっていくのか、今からとても楽しみです(笑)。


企画展

◆「高田吉朗 水の記憶」 2013年10/2まで
◆「高安醇 作品展」 2013年10/18~12/11
◆「Happy Garden ハンドメイド・グループ展Ⅱ」 2013年12/19~21
◆「篠田桃紅芸術月間2014」 2014年1/10~3/26

★ 岐阜現代美術館からプレゼントあり!詳しくは読者プレゼントをご覧ください。
※応募締切は2013年12月10日


Data

  • 関市桃紅大地1(鍋屋バイテック会社 関工園内)
  • TEL.0575-23-1210
  • 開館時間:9:00~16:30
  • 休館日:日曜日、祝日、第2・4土曜日、年末年始
    ※イベント・展示替えの臨時休館あり
  • 観覧料:無料
  • Pあり
  • http://www.gi-co-ma.or.jp/
関市桃紅大地1

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コメント

先日、ルドン展に出かけました。

展示はもちろんのこと、ルドンのお兄さんが
作曲したというポルカが忘れられません。
心地のよい音色。。

近くに居た職員さんに、学芸員の知人の方が
特別に演奏された音源だとおききしました。

期間内に、ポルカの特別演奏会があればと心から思います!

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