テーラー イマヅ洋服店

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テーラー イマヅ洋服店

勘と経験が頼りの注文紳士服の世界に18歳で飛び込む。
学校で学んだ機械力学を駆使し独自のテーラー技術を開発。
世界を股にかけて活躍するスーパー洋服職人の技術の秘密。

今は珍しくなったが、昔はよく天秤棒を肩に担いで荷物を運んだ。慣れないと重くてバランスを保てない。

天秤棒を上手に担ぐにはコツがある。首筋から数センチの肩の位置に乗せると、うそのように軽くて疲れない。

人間にとって洋服の重さは荷物のように負担になる。その荷重を支えるには結構エネルギーが必要だ。だから軽くて着やすいことは、よい衣服の基本的な条件。

「洋服の重量はほとんどが肩にかかるんですね。だったら天秤棒を担ぐ時の要領を応用すれば着やすい洋服ができるはず」

イマヅ洋服店店主の今津辰男さん(78)は、そう着想した。工業学校を卒業してすぐに父の店に入って間がない60年も昔のことだ。得意の機械力学と繊維の構造学を猛勉強。機械英語を頼りに、本場イギリスの洋服づくりの技術書を精読した。学校で学んだ力学の モーメント計算と仮縫いを繰り返して遂に答を突きとめる。首筋から肩先に向かって約3・5センチの位置に洋服の重心を集めれば、その重さが最も軽く感じられることを発見したのだ。

勘と経験に頼った紳士服仕立の世界に科学的手法を導入。機械製図の技術を生かして描いた今津式型紙は大きな注目を集める。1958年の全日本紳士服技術コンクールで文部大臣賞に輝いた。

イマヅ洋服店は1925年加納の旧中山道沿いで創業。警防団や消防団などの制服をつくっていたが、2代目の辰男さんが誂え洋服の技術を学んだ。その後、高級注文紳士服の店として名を馳せるだけでなく、芯地やネクタイなどの製造販売も手がけ、岐阜はもちろん日本を代表する洋服店になった。

イマヅ洋服店の紳士服注文コースは3つに分かれている。オーダーメイド、プレタメイド、イージーメイド。オーダーメイドは全工程ハンドメイド、他は縫製を工場で行う。安価で手軽な既製服の普及で、注文紳士服の需要は最盛期の3分の1程度にまで落ち込んだ。

しかし、ハンドメイドのオーダーメイドこそイマヅの伝統。採寸から仕上がりまでに364工程80時間の手間と時間をかける完璧主義にこだわる。胸にボリューム感を出し、襟のローリングを柔らかくする独自の芯地を工夫するなど、技術開発も怠らない。その努力は4件の特許と13件の実用新案になって実り、イマヅの技術を支える。

独自の技術を開発した今津さんは、世界のテーラーからも注目を浴びている。87年にはスペインのバルセロナで開かれた世界洋服業者大会の席で、日本代表として技術発表をした。世界高級注文洋服業者連盟の副会長でもある。

注文は日本を代表する有名企業の トップや文化人、野球選手などから、タイの首相、英国総領事などまで国内だけではなく世界から舞い込む。

60年前、父の店に入るとすぐ、18歳の今津さんは昭和天皇の洋服調製師だった京都の杉山静枝氏の指導を受けて、科学的手法を叩き込まれた。父や父の知人からは裁縫技術を教わった。

やっと一人で縫えるようになった頃、父の友人から注文がきた。出来上がって袖を通してもらうと、その客は「こんなもの、着れるか」とできたばかりの洋服を仕事台に叩きつけた。

「あの時の悔しさは、一度も忘れたことがありませんね」

その時に火がついた今津さんの職人魂は、今日までずっと燃え続けている。

Photo

イマヅ洋服店

  • 所在地:岐阜市加納本町2-19
  • 電 話:058-271-4855
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