楽器職人 ロッシ・ギターズ

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楽器職人 ロッシ・ギターズ

少年の頃、楽器に魅せられた夢が蘇った。
夢は世界のスタンダードとなるギターを、と果てしない。

工房にはパット・メセニーのスローな曲が低く流れ、微かに甘い香が漂っている。

「匂いますか。メイプルかな」

デニムのエプロンを当てた小池博さん(47)は、作業台から削りかけのボディーを持ち上げて、素人みたいに鼻を近付けた。

20平方メートルほどのこじんまりした部屋。ノコギリ、ドリル、カンナ、サンダー……使い込まれた小さな工具が作業台の周りを陣取っている。整然と材料を積み上げた棚。壁には手描きの設計図。

岐阜市の北部。百々ヶ峰の西麓に張り付いた古い集落の民家がロッシ・ギターズの工房だ。ここを拠点に小池さんは、5年間に1人で30数本のギターを世に送り出した。

 

中学生でビートルズに夢中。高校時代はバンドをつくってギターを弾いた。そのうち音楽よりも楽器そのものに興味を持ち始める。京都の美術系大学を卒業後、大手印刷会社に就職してアートディレクター。しかし、頭と口だけでものをつくるような仕事に疑問を持ち、少年時代のギターいじりが蘇る。

「とにかく自分の手で直接ものをつくってみたくって。大工だった父の血筋かもしれませんね」

中古ギターを買ってきては、修理や改造を楽しむ。立ち寄った大阪のギター工房がギターづくり教室を開催していた。会社勤めのかたわら通いつめて、とりこになる。数年間で技術を身につけ、作品がフェアで認められる。手工ギターのプロ製作者になることを決意。会社をやめて生まれ故郷の岐阜へ戻った時は、42歳になっていた。

 

小池さんは様々なタイプのギターを手掛けるが、最近は主にジャズ演奏に使われるアーチトップが多い。東京、大阪などの楽器店や、展示会などを通じて、演奏家などハンドメイドギターの愛好者から注文を受ける。

注文者の要望にとことん耳を傾ける。傾けているうちにめざす作品のイメージが湧いてくる。寝ても覚めても頭の中はギターでいっぱい。

「ああしたい、こうしたい、と考えている時が一番楽しいですね」

と、布施明そっくりの優しい目になって笑う。小池さんの名刺の肩書きは「製作者」ではなく「制作者」。テーマを設定し、ゴールをイメージして、そこに至る方法に知恵を絞る。アートディレクターの才能を身に付けたギター製作者。時代が生み出した最強の職人像かもしれない。

 

「弾いてみて気持ちよく、弾くたびにもっと弾きたくなる。そんな佇まいのギター。感性を揺り動かす楽器としてのギターですね」

小池さんの求める理想のギターだ。職人修業を経ていないだけに、発想はのびのびと素直。偏屈なこだわりはない。これみよがしな新奇さや、過剰な装飾を排除したシンプルモダンな作品。「よく鳴る」「弾き心地がいい」とファンがついた。

ニューヨークで活躍した伝説のギター製作者 ジェイムズ・ダキストが頭から離れない。

「ダキストがジャズギターの新しい代表モデルをつくったように、ぼくも世界から認められるようなスタンダードをつくりたい」

今度の笑顔は、布施明よりもパット・メセニーそっくりになった。

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ロッシ・ギターズ

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