溜醤油製造 山川醸造

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溜醤油製造 山川醸造

溜は醤油の祖先だと言われる昔ながらの調味料。
その濃厚な独特の風味は東海地方の食文化に欠かせない。
伝統製法を継承して溜をつくり続ける醸造会社が岐阜市にある。

大人数人が手をつないで、ようやく囲めそう。よく使い込まれた十数個の巨大な杉桶が、濃密な溜醤油の香りに満ちた薄明かりの作業場にどっしりと立ち並んでいる。

社長の山川晃生さん(49)に勧められて、杉桶に立て掛けられた2メートルほどの梯子を上がり、桶を覗き込む。黒っぽい液体が浅く張り詰め、天井近くに切られた小さな明かり窓から射し込む午後の光を映している。

「仕込み中の溜醤油です。指に付けて舐めてみても大丈夫ですよ」

仕込みに入って2年近くになる桶だ。醤油特有の塩っぱさよりも、ふくよかな甘さが勝って、果実を思わせる香りが鼻腔に広がる。大豆と塩と麹菌が織り成す絶妙の味。壜に詰められ生引の溜醤油として出荷される日も近い。

 

醤油には一般の醤油と溜醤油がある。一般の醤油は大豆と麦の原料に種麹を作用させてできたもろみを絞ってつくる。溜醤油の原料は大豆が大半。もろみを絞るのではなく、桶の底に自然に浸出してきた滲出液を使い、醤油の原型と言われる。日本の醤油の大半は、一般の醤油。現在では、溜醤油はかつて主産地だった東海地方でわずかにつくられているに過ぎない。

山川醸造は昭和18年創業、山川さんで3代目だ。長良川の伏流水を仕込み水に使い、溜醤油と味噌をつくり続けてきた。製法はかたくなに継承してきた昔ながらの伝統製法。

大釜で蒸した大豆を味噌玉にして麹を付け、麹室に入れ3日間。麹菌が十分に繁殖した麹を杉桶に入れて仕込みに入る。麹の上には布を敷き、重石に石を乗せた後、塩水を送り込む。こうして2年~2年半じっくり熟成させる。

桶の中央に底から木製の煙突を立てる。麹から滲み出す焦茶色の液体が煙突に溜まる。これが溜醤油。週に2回ほど柄杓で汲み出し麹に掛ける作業を繰り返して、溜醤油を循環させる。

熟成期間が終ると、煙突に溜まった溜醤油を取り出す。生引と呼ばれ、酒で言えば一番絞りに当る。生引溜を取って残った味噌は、プレスで圧搾して溜醤油を絞り出す。濁りを沈澱させて除き、瓶詰めすれば商品の誕生だ。

 

溜醤油は人間の知恵の産物だが、それをつくる主役は麹菌。味噌玉に十分に働きかけてもらう環境が重要だ。麹室の温度と湿度の管理もポイント。センサーもあるが、その日の天候に合わせて暖房器具や送風機で微調整するには、職人的経験がものを言う。

溜醤油づくりは、ほとんどが手作業。煙突から溜を汲み出す汲み掛け。圧搾機に掛けるために桶から味噌を掘り出す味噌掘り。職人的勘と同時に熟練した肉体労働が求められる。

「豆が時間をかけて別の形になっていくのを見る喜びが、仕事のきつさを忘れさせてくれます」

と山川さん。

溜醤油の需要は、飲食店など業務用が主力。このままでは将来がないと山川さんは溜をベースにした家庭用の調味料を次々に開発した。「アイスクリームにかける醤油」「たまごかけごはんのたれ」など話題の商品を連発。

「この地方独特の食文化の伝統を次の世代に伝えたい。古くて新しい調味料として、溜醤油が家庭でも見直され始めたのがうれしいですね」

「旨味は溜が一番」と断言する山川さんのアイデアは、尽きないようだ。

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山川醸造株式会社

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