柳ケ瀬レンガ通りにある「アラスカ文具店」は、いささか洒落た文房具屋だ。こぢんまりとした店内に、国内外から集めた選りすぐりのアイテムが並ぶ。子どもの頃の記憶が蘇るような懐かしいパッケージに入ったでんぷん糊。フランスの老舗筆記具メーカーのボールペン。ハンガリーの小学生が愛用するノート。
「良いデザインのものが行き渡れば、岐阜はもっと良いまちになっていくと思うんです」と店長の横山七絵さん。しかし、巷にあふれる安価な量産品に比べて、きちんとデザインされたものは割高だと受け取られがちだ。「なかなか受け入れられないこともありますね。でも、少しずつでも、デザインがここからまちに浸透していけばいいな、って」。
横山さんは仕入れや販売の傍ら、オリジナル商品の企画も手掛ける。代表作は正方形の薄紙に太さや色が異なるストライプのラインをプリントした「オリガミ」。ふと浮かんだアイデアに取り掛かってみたものの、紙の厚さ、ラインの幅や色、印刷の濃淡など、課題は山積み。何度も試作を続け、最後は「泣きそうになりながら」商品化にこぎ着けた。2枚、3枚と重ねると、透けて見えるストライプの組み合わせで、印象ががらりと変わる。ありそうでなかった新しい視点で楽しめる折り紙に、客の反応は上々。すぐに店の人気商品として定着した。こうして、横山さんが生み出すデザインもまた、ゆっくりとまちに広がっていく。
「アラスカ文具店」が扱っているのは、単なる商品ではない。たとえば、計算された使い勝手の良さ、フォルムの美しさ、想像力をかき立てるユニークさ。そんな「デザイン」も一緒に売っているのだ。岐阜のまちなかにこんな文房具屋があるなんて、実に愉快なことである。
Photo
- 1.今後もオリジナル商品のラインアップは増やしていく予定。オリガミ(18枚入)/¥357、岐阜のブックマーク/各¥150、ぽち袋(3枚入)/¥189
- 2.思わず好奇心をくすぐられる商品も。学校の図書カード入れや蔵書ラベルは、懐かしんで購入する人が多いのだとか
- 3.大きな鉛筆のオブジェは横山さんが制作したもの
- 4.試作段階の「オリガミ」や手描きのパッケージデザイン案。試行錯誤の跡がうかがえる
- 5.平成19年に柳ケ瀬商店街にある雑居ビル「やながせ倉庫」で文具や雑貨を無人販売する小さなスペースとして始まった「アラスカ文具店」。昨年4月に現在の場所へと移転。独り立ちを果たした
- 6.「いつか、店の中がオリジナル商品でいっぱいになったらいいな」。横山さんの夢は広がる
※2013年12月に移転されました
アラスカ文具店 [アラスカブングテン]
- 〒500-8833 岐阜市神田町6-16-2
- 営業時間◇13:00~20:00
- 定休日◇水曜日
- http://alaskabunguten.com/