忠節橋の南。住宅街にひっそりと佇む『cafe 茄菜草』。店主の後藤桂子さんが、平成5年に自宅を改装して始めた小さなカフェだ。
静かに時を刻む古時計、フランス製のアンティークチェア、アンドレ・プットマンのソファ、一目惚れして買った絵画、愛猫のポートレート…。カウンターの大きな鉢には、裏庭に咲いた素朴な草花がさりげなく生けてある。
「これはキンミズヒキ。ススキと一緒に飾ってみたの」。そうほほ笑んで、桂子さんがネルで丁寧にコーヒーを淹れてくれる。「今日のケーキは洋ナシのタルトとガトーショコラ。スコーンもあるわよ」。
ここで味わえるのは、挽きたてのコーヒーや香り高い紅茶、季節のフルーツを使ったケーキ、旬野菜のパスタや手作りパンのサンドなど。彼女が美味しいと思うもの、良い素材にこだわって少しずつレシピを作り変えてきたものばかりだ。気取らないシンプルな味わいが、そっと優しく心を満たしてくれる。
1987年に公開されたアメリカ映画「八月の鯨」。海岸にあるサマーハウスで過ごす老姉妹の物語は、彼女の大のお気に入りと言う。古い時計の音、ガラス戸から注ぐ優しい光、ソファに腰かけてお茶を飲む時間。そんなエッセンスがこの店のあちらこちらに散りばめられている。
緩やかに時が流れる昼下がりに、少しムードのあるほの明かりの夜に。女性も男性も、いろいろな人がふらりとやって来る。長年通う顔なじみや、遠くから足を運ぶ常連客も多いのだとか。
「私、人付き合いが得意じゃないし、愛想笑いもできない。でも、やっぱり人が好きなのね。だから私は私のスタイルで、ずっとこのまま(笑)」。
桂子さんの好きなものを詰め込んだこの空間。美味しいものが食べたい時、穏やかに過ごしたい時、ちょっとおしゃべりを楽しみたい時。ふと立ち寄りたくなる心地良さが、この場所に広がっている。
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- 「花や自然のものが好き。食べ物もシンプルなものが美味しいわよね」とほほ笑む後藤桂子さん。彼女とのおしゃべりを楽しみに通う常連も多い
- 自家製のジャムをのせて。スコーン/¥400(コーヒーとセットで¥800)
- 穏やかな光が差し込む店内。夜はまた違った表情を見せる。2匹の愛猫クリスとナナコの姿が見られることも
- 奇数月の第4木曜日の夜に「ワイン会」を開催。毎回4種類ほどのワインと桂子さん手製の料理が楽しめる
- パスタにサラダ・自家製パン・コーヒー・ケーキが付く。パスタセット/¥1,200(15:00以降は¥1,500)
- 店の前にはレモンと夏椿の木、ミニバラやアジサイが植えられており、季節ごとに可憐な花を咲かせる
cafe 茄菜草 [カフェ ななくさ]
- 岐阜市青柳町2-2
- TEL.058-251-8444
- 営業時間◇12:00~22:00
- 定休日◇火曜日・第3月曜日
- 駐車場◇4台
- http://cafe-nanakusa.blog.so-net.ne.jp/