ナポリピッツァの伝統は深い。古くから伝わる職人(イオーロ)の技術継承を目的に発足した「ナポリピッツァ職人協会」と「真のナポリピッツァ協会」。その認定を受けた店だけが“本物”と胸を張ることができる。『DA ACHIU』はこの2つの看板を掲げる岐阜県下初のピッツェリアだ。
店主の若原敦史さんは10年前、雑誌でピッツァ職人の記事を読み「なんだ、この格好良さ!」と素直に思った。ピッツァを究めたいと愛知の名店『ピッツァイースト』で修業。その後、本場ナポリへも渡った。「本当にさ、ピッツェリアばっかりで驚いた。13歳の悪ガキも見習いをしてるんだ」。もはや文化として根付く歴史と誇りに、一層惹かれた。それから大須の『チェザリ』を皮切りに全国各地で腕を磨き、故郷の岐阜に店を構えたのが今年の1月。客足は上々だ。
「真のピッツァは厚みがあっても軽いから何枚でもいけるんだ」。ナポリピッツァは生地が命。水1リットルに塩は50グラム、粉・水・塩・酵母しか使用できないなど、規定も厳格。シンプルなだけに、材料の質や配合で趣向を凝らす。工程で特に難しいのが、練りだ。練り過ぎると歯切れが悪く、足りなければ十分に膨らまない。そこを見極めるのが職人の采配、と言う。
注文が入ると熟成発酵させた生地を手で伸ばす。450度の薪窯の中へ入れてわずか1分半。表面は香ばしくて中はもっちり、熱々のトマトとモッツァレラチーズが小麦の旨みを引き立てるナポリ名物「マルゲリータ」の完成。弾力、風味、塩加減が絶妙な一枚は、ついもう一切れ、と手が止まらない。
店は軌道に乗った。それでも彼に慢心はない。「次の夢はイオーロのさらに上、マエストロの仲間入り。この人達に認めてもらわないとね」。陽気な若原さんの表情が引き締まり、憧れの巨匠の写真を見つめる。その眼差しには、職人としての志と情熱が確かに存在していた。
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- ナポリ名物マルゲリータとマリナーラはダイレクトに生地の旨みが感じられる。マルゲリータS.T.G/¥1,250~、マリナーラ/¥700~
- 調理場を担うのは男性陣。左から加藤さん、若原さん、MASI高崎さん
- 薪窯で全体が均一になるように焼き上げる1分半の真剣勝負。いつも笑顔の若原さんも職人の顔に
- 毎週イタリアから空輸する水牛のモッツァレラチーズは絶品
- ナポリピッツァ職人協会認定証や、協会の重鎮たちとの写真が壁にずらりと飾られている
- 職人協会副会長アドルフォ・マルレッタ氏からもらった若原さんのあだ名「アチュ」が店名の由来
PIZZERIA E TRATTORIA DA ACHIU ダ・アチュ
- 岐阜市神田町7-17 神田ビル1F
- TEL.058-266-1116
- 営業時間◇11:30~15:00(OS14:30)
17:00~23:00(OS22:00) - 定休日◇月曜日(祝日の場合は翌日)
- http://www.facebook.com/da.achiu/