店主の川島祐里さんが忘れられない味に出会ったのは小学生の頃。『A.L.C.cafe』の原点となったそれは、父が買ってきてくれた甘い甘い外国のお菓子だった。
8年前、焼き菓子のオンラインショップを創業。3年前にやながせ倉庫で週末限定の店を開き、平成26年5月にはカフェ併設の現店舗にリニューアルオープン。
始まりは大学在学中。専攻していたプログラミングへの興味が薄れ、唯一趣味として続いた製菓の道に進もうと決心。喫茶店やパン屋、居酒屋を渡り歩き、中でもある洋菓子店での経験がパティシエとしての礎に。当時の同僚は年下の女性ばかりだったが、任されたのは型洗いや卵割りなど単純なもの。それは、自分に実力がなかったから。その現実に大きな屈辱感を味わったが、「同僚には負けたくない」という気持ちが川島さんを奮い立たせた。その気迫を感じ取ったシェフからの厳しい指導に真摯に応えるうち、看板のケーキを任されるまでに成長。「後輩を引っ張っていってほしい」と信頼される存在になった。
菓子作りのときに頭をよぎるのは、幼い頃に食べたあの外国のお菓子。そんな誰かの心に残るものをイメージして作った自信作が、毎日店に並ぶ。芳醇な発酵バターを使った「バタークッキー」は、アーモンドの粉を混ぜることでほろっとした口当たりに。周囲の砂糖のザクッとした食感とのコントラストも秀逸だ。冬季限定のトリュフチョコ「ボンボンショコラ」も人気。生クリームとチョコレートを絶妙に配合し、なめらかなガナッシュに仕上げる。
「口にした人が、ふと、思い出して食べたくなるものを作りたいですね」とほほ笑む川島さん。その表情とは裏腹に、負けん気の強さと、揺るぎない誇りを有するがゆえに、おいしさへの探究心が尽きることはない。このひたむきな思いが、この先も訪れた人の心を掴んでいくだろう。
Photo
- 開業当時からあるバタークッキーをはじめ、チョコや砂糖菓子など品数は徐々に増えていった。(手前から時計回り)バタークッキー(3枚入)/¥160 、ダークラム/¥200、バレンシア/¥280、パート・ド・フリュイ/¥90
- 今回の改装で念願のカフェスペースを設置。厨房から甘い香りが通りにまで広がる
- 川島さんと、スタッフの髙間美香子さんを中心に店を回す。店名に込めた「みんなに愛されるお菓子」を目指し、ここで作業に励む
- 純生クリームを加えた、コクのある濃厚なプリンは、店で1番の人気。カスタードプリン/¥250
- ショーケースには定番の無添加クッキーを含め約30種類の洋菓子が並ぶ
A.L.C.cafeエー・エル・シー・カフェ
- 岐阜市弥生町10 やながせ倉庫1F
- TEL◇058-265-7445
- 営業時間◇12:00~18:30
- 定休日◇月・火曜日(12月31日〜1月6日は休み)
- URL◇http://alc-cafe.com/