青々とそびえる金華山が間近に望める倉庫の一角に、矢島明さん、奈津美さん夫妻が営む『YAJIMA COFFEE』はある。昨年3月に店をスタートさせた二人。出会いは7年前。デートでよく、名古屋にある小さな喫茶店を訪れた。マスターの人柄、コーヒーの味、そこで一緒に話す時間。「本当に全部が、大好きだった」としみじみと思い出す明さん。「僕らもこんな店を作りたいね」と語り合い、それが互いの夢となった。
それから明さんは約4年間、地元客が集う岐阜の喫茶店「珈琲工房ひぐち」で修業。閉店後は裏の工房で豆の焙煎方法を学んだ。教えてもらえるのは基本だけ。後は、自ら試行錯誤を繰り返す日々。「あの頃の経験が、この店のコーヒーの芯になっています」。
程よく存在感のある苦味と、心地良い酸味や甘み。明さんが目指すのは、幅広い年代に愛されるような風味のバランスが取れた一杯。自家焙煎した豆を注文が入ってから挽き、丁寧に淹れる。湯を注ぎ、粉の膨らみや気泡の出方など、じっとその表情を見る。最後には必ず、一口味見。「焙煎具合、湯の温度、淹れ方、天候などで味わいは常に変化する。そこがコーヒーの面白いところです」。
もう一つ、この店に欠かせないのが、奈津美さんが手作りするケーキだ。その作り方を教えてくれたのは、かつてカフェを営んでいた老夫婦の奥さん。奈津美さんは二人を、“パパさん、ママさん”と呼んで慕い、何度も自宅に足を運んだ。習ったレシピは60種類以上。「初めて食べたとき、美味しさに衝撃を受けた」というママさんのケーキ。だから、創作は加えず、材料も同じ。その味をひたむきに守っている。
オープンから1年半。自分たちが好きなものに気付き、大切な人たちに出会い、夢を形にした店。二人にとってかけがえのないこの場所で、次は誰かの“大好きな時間”が生まれていく。
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- 日替わりのコーヒーとともに、濃厚なチョコレートタルトを。ショーケースにはケーキが4~7種類並ぶ。本日のコーヒー/¥450、チョコレートタルト/1カット¥530(ドリンクセット、テイクアウトは50円引き)
- 「出会いや繋がりに、本当に恵まれました。ありがたいですね」と矢島さん夫妻
- 倉庫の一室を改装した店は天井が高く、開放的。光が差し込む大きな窓からは金華山と岐阜城が見える
- ユーモアがあり、気さくな人柄の明さん。コーヒーを淹れる瞬間は神経を集中させ、真剣な表情に
- 豆は常時15種類以上がそろう。毎朝、開店前の店内で2~4銘柄を焙煎
- 明さんが“パパさん”からレシピを教わった約20種類のカレーが、定番や月替わりとして登場。ランチセットも人気だ。ビーフカレー/¥1,100
YAJIMA COFFEE ヤジマコーヒー
- 岐阜市大宮町1-8
- TEL◇058-215-6890
- 営業時間◇11:00~19:00(OS18:30)
- 定休日◇火曜日
- 駐車場◇5台
- URL◇http://www.yajimacoffee.jp/