長良橋通り沿いにあるビルの2階で営まれている『Honky Tonk』。扉を開けると、まるで街なかの喧噪とは離れた粛々とした空間に、緩やかな音楽が満ちている。
「音楽の話になると、長くなりますよ」と愉快そうに話す店主の中本拓志さん。10代の頃から音楽を愛好し、デスメタルやハードメタルにはまった青春時代。そして20代、あるロックバーに足繁く通い詰める。60~70年代のレコードがあふれるその場所で、より一層音楽に傾倒。さらに時代を遡り30~40年代に流行したブルースにまで手が伸び、ジャズの魅力を知った。それからボサノヴァ、ポップスなど、数え切れないほどの愛しい音に出会った。「音楽への想いに気付いた特別な店ですね」。たくさんの魅力的な音源と店主の人柄、気負うことのない空気感が好きで、自分もいつかそんな店が開けたらとレストランチェーンを展開する会社に5年勤め、料理や経営を学んで、平成26年、気軽に音楽に出会えるカフェをひっそりと開いた。
カウンターの一角に並ぶのは枯葉色を帯びたレコードジャケット。無機質なモルタルの壁と古材で構成された店内は、ぼんやりと灯るエジソンランプに照らされ、深々とした落ち着きを宿す。そんな空間で味わえるのは、地元一宮市のスペシャルティコーヒー専門店に特注した苦みと酸味が程よいオリジナルブレンドや、穀物の風味豊かなライ麦入りパンに、パストラミビーフや自家製ザワークラウトなどを挟んだ自慢のルーベンサンド。シンプルな美味しさのケーキにもファンが多い。
開店から3年が経った。音楽好きが開いたカフェは、着々と客の心を捉えてきたが、現状に固執はない。「10年後も今と同じカフェという形態ではないかもしれません。何をどう取り扱うかは美的意識が同じ方向を向いていればいいと思っていて。ただ、変わらないのはそこに音楽があることでしょうね」。
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- 壁のモルタルは中本さんと建築デザイナーとで塗り上げたもの。インテリアもメニュー表もごくシンプルに。空間づくりに細部までこだわった店内には、昼でも夜でも、ゆっくりと椅子に腰かけ、時間を忘れて過ごす客の姿が
- ホンキートンクのルーベンサンド(本日のデリから2品、ポタージュ付き)/¥1,200(税込)
- 「今後は物販も始めようかと計画中です」と中本さん。新たな展開にも期待が膨らむ
- 敬愛するシンガー、トム・ウェイツの1枚をはじめ、BGMは膨大な数のレコードやCDからその日の気分で選ぶ
- マサラチャイやアイリッシュコーヒーなどドリンクの種類も豊富。ホンキートンクブレンド/¥500(税込)
- アンティークチェアが並ぶ壁際の席。何度も訪れては、決まってここで本を読む客も多いのだとか
coffee and music Honky Tonk [ホンキートンク]
- 岐阜市神田町6-2 富田屋総本家ビル 2F
- TEL◇058-266-5515
- 営業時間◇13:00~23:00(OS22:00)、(土・日曜日・祝日は12:00~)
- 定休日◇木曜日