岐阜市長良の閑静な住宅街に、約65年続く中華料理屋がある。コの字型のカウンターと3つのテーブルを埋める客で、昼時や週末は注文が飛び交い、店内が活気を帯びる。炒飯をかき込みさっと立ち去る作業着姿の男性、近所の年配客。訪れた家族連れは料理を待ちながら、嬉しそうに厨房を覗き込んでいる。『金龍』で見られる、変わらない光景。
厨房で鍋を振るうのは、2代目の神山勇さん。忙しい勇さんを気遣い、娘の清水由美子さんが店を手伝う。「次は五目そばと、餃子ね!」「はい、できたよ」。親子ならではのあうんの呼吸で、流れるように調理が進み、出来たばかりの料理が湯気を立てて客のもとに運ばれる。
メニューは中華そばや八宝菜、唐揚げなど約20種類。中でも食すべきは「ヤキメシ」だ。いわゆる炒飯だが、この店の炒飯はひと味違う。水気の多いモヤシがたっぷり入るにも関わらず、全くべたつかず、米も具材も玉子もほどよく油を纏ってはらはらと口の中でほどける。あっさりと薄めの味付けなのに、妙にスプーンが進む。「一言では言えん癖があるでしょ」。勇さんがにっと笑う。調味料は塩や酒、だし、ごま油、白ワイン少々とごく一般的。だが、創業からの年季が入った中華鍋、ガスコンロの強力な火力、長年の間に身に染み付いた一連の手さばき、温度や湿度でわずかに変える調味料のさじ加減。決して家庭では真似ができない、そしてこの店にしかない味が、確かにそこにある。
「そんなに儲けようとも思わんし、値段もそのまま。まあとにかく、お馴染みの方に喜んで食べてもらえや、ええでね」。まちの人々に愛される中華料理屋。誰もが、いつまでも続いてほしいと願っている。
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- 店主の神山勇さんと娘の清水由美子さん。餃子の皮や五目そばなどの麺もすべて手作りのため、勇さんは毎朝5時半から仕込みをしているが、そんな苦労も「老体にムチ打って、大変な店なのよ」と朗らかに笑い飛ばす
金龍
- 学生客も多いため、大盛りが基準に。ヤキメシ/600円、スープ(コーン玉子入)/250円(価格はすべて税込)
金龍
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- 亡くなった妻の道子さんは先代の姪。45年前に一緒に店を継いだ。新聞に紹介された際に撮影した夫婦の写真が今も大切に飾ってある
金龍
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- 低めのカウンターに囲まれた厨房はオープンキッチンさながら
金龍
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- ふんだんに入った野菜の持ち味を、優しい味のあんが見事にまとめる。自家製の麺は柔らかく、あんともよく絡む。五目 そば/700円
金龍
金龍
- 岐阜市長良桜井町1-15
- TEL◇058-232-7247
- 営業時間◇11:00~21:00(LO20:30)
- 定休日◇月曜(祝日の場合は翌日)
- 駐車場◇8台
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※応募締切は2018年9月10日