あなたは街角にあるギャラリーを覗いたことがあるだろうか。あるいは、芸術には興味がないからと、素通りしてしまうだろうか。
金華橋通り沿いにある「アートギャラリー水無月」は、県内出身の作家を中心に個展を行う企画画廊。「若い作家との企画が多いのは、一緒に育っていけるから。それに、面白いしね」とオーナーの豊田純さん。自らの審美眼と直感に訴える若手作家を掘り起こし、作品発表の場を提供する。個展の準備期間はおよそ1年。打ち合わせを重ね、時に相談に乗り、時に見守りながら、作家と寄り添い初日を迎える。「個展ごとに毎回、違う店をオープンしているような気分だね」。そう話す表情は、いかにも楽しそうだ。
幼い頃から日本画家の母・美枝子さんに手を引かれ、頻繁にギャラリーや画廊を訪れた。自宅では絵画教室のデッサン会が開かれ、気付くといつも絵画が身近にあった、という豊田さん。26歳で商売を始めようと思い立ち、ごく自然の成りゆきで柳ケ瀬にギャラリーを開いた。2004年に現在の店舗へ移転。窓からは、息子が通う小学校と青々と茂るサワグルミが見える。
数々の絵画に囲まれて日々を過ごす豊田さんにとって絵画の魅力はと聞くと、困ったように苦笑した。そして「例えば犬が好き、オレンジ色が好き、っていう人がいるのと同じように、僕は絵画が好きっていうだけだよ」と飄然(ひょうぜん)と笑った。
町を歩いて、大好きなショップに立ち寄るように。ふと、本屋の棚から文庫を手に取るように。気軽にギャラリーを覗いてみてはいかがだろう。個展のたびに全く違う表情を見せるこのギャラリーが、いつしか、何度も足を運んでしまう身近な場所へと変わることだろう。
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- 8月に開かれた「ヨコヤマ茂未 画展 野方図録」。豊田さんは数年前、名古屋で古本屋の軒先に吊るされたヨコヤマさんの手描きTシャツに目を留め、その資質を見い出した。その後、絵画の世界に飛び込んだヨコヤマさんは、3度の個展を開くまでの作家となった
- 毎夏、奥村晃史さんをはじめ、多数の作家の独創的なTシャツを展示販売する「Tシャツ展」を開催
- 迫りくるような力強い作品は、真っ白なギャラリーの雰囲気をいとも簡単に塗り変える
- 「本物のチューリップより、作家のフィルターを通して描かれたチューリップの方に惹かれるんだよね」と豊田さん
- 過去に企画した個展のDM。実にさまざまな作品が、このギャラリーに掲げられてきた
- 6月生まれの豊田さん。ギャラリー名も分かりやすく「水無月」に
アートギャラリー 水無月[アートギャラリー ミナヅキ]
- 〒500-8813 岐阜市明徳町5
- TEL.058-263-2450
- 営業時間◇10:00~18:00
- 定休日◇不定休
- http://www.gallery-minazuki.com/