長良橋から少し北東へ入った住宅街。小道に馴染むように佇む一軒の老舗。大正末期創業の餅菓子とアイスクリームの店「松乃屋」だ。
白い暖簾をくぐってガラス扉を押し開ける。古い賞状、使い込んだカウンター、鉄製の机といす。店内にはいかにも懐かしい空気が漂う。笑顔で迎えてくれるのは、4代目の鬼頭孝幸さん。本巣市の和菓子屋で16年間修行した後、代々営む店を受け継いだ。
名物は、昭和25年から素材と製法を守る「もなかアイス」。注文すると、大きなステンレスの容器からアイスをすくい、最中に詰めてくれる。脱脂粉乳で作るアイスは卵や牛乳を一切使わない。シャーベットのようなあっさりとした甘み、さらりとした口どけが魅力。これをあふれんばかりに盛った「大盛りコップ」は、通称“バクダンアイス”と呼ばれ、こちらも常連から長く愛されている。
草餅やおはぎ、どら焼きなどの味わい深い手作りの和菓子に魅了される客も多い。北海道産の小豆、特別栽培の国産小麦粉や厳選した黒大豆など、使う材料からこだわりがうかがえる。「とにかくお客さんに安心して食べてほしいね」と話す鬼頭さんは、製菓衛生師の資格を持つ、食の安全のエキスパート。自然のままの素材だけを使う姿勢を貫くことで、「体へのやさしさ」を追求しているのだ。
「昔からずっと仕入れ先は一緒。信頼できる素材で当時と同じように作るうちのお菓子は、何を食べても安心です。自信を持って体にやさしいと言えるお菓子を、一人でも多くの人に食べてもらえたら」。
80年以上、守り続ける製法。そこから生まれる懐かしい味わい。「いつまでも変わらない」のは、心から安心して食べてほしいと願う、鬼頭さんの真心と同じだ。
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- 冬にもアイスを食べたいというリクエストの多さに応えて、今では年中注文できる。もなかアイス(バニラ・抹茶・小豆・イチゴ)/¥120、 大盛りコップ/¥200
- 「うちのアイスを気に入って、また来てもらえたときが一番うれしいねえ」と話す店主の鬼頭孝幸さん
- 竹べらで 大胆に盛り付ける“バクダンアイス”。店内でしか食べられないので、訪れた際はぜひオーダーを
- 先代の弘光さんと一緒に趣味で集めた 鉄道模型が飾られている。子どもたちにも大人気
- 懐かしさただよう店内では、アイスや和菓子をゆっくりと味わえる
- 全国菓子大博覧 会で金賞を受賞したどら焼きは、醍醐卵、特別栽培の小麦粉、無添加の醤油を使用。黒糖とバター醤油もある。どら焼き/各¥110
- 通り沿いのショーケースに並ぶ季節の和菓子や餅菓子に惹かれて、道行く人が思わず暖簾をくぐることもしばしば
餅菓子・アイスクリーム 松乃屋[マツノヤ]
- 〒502-0071 岐阜市長良弁天町93-2
- TEL.058-231-9337
- 営業時間◇8:00~19:00(夏季は20:00まで)
- 定休日◇水曜日(夏季は水曜日の雨天時以外は営業) 駐車場◇1台