伊奈波神社にほど近い、昔ながらの町並みにある「布武」。明治の造り酒屋を改装した情趣に富む空間で、地元の食材をふんだんに盛り込んだ和食がいただける店だ。9年前のオープン以来、世代を超えた多くの客に親しまれている。
食材を調達するのは社長の森田さん。定期的に400キロもの距離を車を走らせ、新鮮な県産の野菜を仕入れている。調味料まで吟味した優しい味わいの料理は、小さな子どもから高齢者まで誰もが安心して食べられるものばかりだ。
開店時の修築工事も自ら手がけた。元の造りをほぼそのまま活かした店内にしっくりと馴染むのは、何百年もの樹齢を年輪に刻む欅(けやき)や橡(とち)の手製テーブル。木の温もりを感じながらゆったりと過ごせる。
店では年に数回、ジャズなどのライブを開催。さらに一昨年には、オーストリア製の世界的に貴重なピアノを設置した。一般にも開放されるこの名器を目当てに、今では全国各地から音楽好きが訪れる。「音楽が流れる町興しをしたくて」と森田さん。大好きな音楽をこの空間で楽しみ、それが岐阜の町の活性化につながっていけば、という思いが実現し始めている。
昨秋、店の隣に甘味処「茶のはな」が完成した。メインは京都から取り寄せる抹茶と、十勝産小豆のスイーツ。メニューはもちろん、建築に2年半を費やした外内装にもこだわりは詰まっている。
寝る間も惜しみ、深夜まで新メニューの試作に励む一方で、森田さんはスローライフを提唱する活動も行う。
「これからの夢は、田舎を活性化させること。自然と共存する生活をぜひ体験してもらいたい」。その小柄な体からあふれ出すのは驚くほどのバイタリティ。屈託のない笑顔で周囲を和ませながら、私たちに新たな提案を投げかけ続ける。
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- 年季の入った梁や柱、広い土間に和室。積み重ねた歳月の重みを感じられる店内は広々としている。奥に置かれている純白のピアノがベーゼンドルファー。緻密な彫刻が施された希少なもの
- 旬の野菜の炊き合わせにお造り、天ぷらが付く布武上ランチ/¥1,580。夜は定食や単品料理が手頃な値段でいただける
- 人懐っこい笑顔が印象的な森田さん。「和の文化が大好き」とにっこり
- 町家造りの家が建ち並ぶ一帯に、濃茶色の木格子戸を持つ外観が溶け込む
- 木目が見事な一枚板のテーブルを備えた個室。掘りごたつでくつろげる
- まろやかな甘さに心がほっと落ち着く。ミルクぜんざい/¥550
- 金華山が一望できる大きな窓を設えた「茶のはな」。柔らかな自然光が包む店内では、コーヒーもいただける
布武[フブ]
- 〒500-8047 岐阜市中竹屋町27
- TEL.058-263-3830
- 営業時間◇布武 11:30~14:00、17:30~OS21:30 茶のはな 8:00~22:00
- 定休日◇月曜日(祝日を除く)
- 駐車場◇40台