小さな木の看板と、壁に整列したカラフルな糸。羽根町の細い路地に店を構える「SAIRI」は、天然素材の糸を扱う専門店。ガラスの扉を開くと、棚やカゴに絹、ウール、モヘア、綿麻、カシミアなど、素材も太さも色合いも異なる糸が、目移りするほどに並んでいる。
「糸にはそれぞれに特徴があります。この短繊維のシルク糸は、ウールの様に取り扱いやすいんですよ。しかも薄くて暖かく、通気性もいい。あのラムウールは洗うとふわりと膨らみが出て、独特の風合いの変化が面白いんです」。
糸のあれこれを実に嬉しそうに話す店主の高見義朗さん。25年間身を置いた繊維業界で、原料の買い付け、ブレンド、色付け、段染めなど、糸ができる工程を実践で学び、知識を培った。「ずっと現場にいて糸を作っていたことが、今になって功を奏していると思いますね」。
「SAIRI」の始まりは、約4年半前。個性的なオリジナル糸を作り出す京都の糸専門店「AVRIL」の姉妹店として、妻の真寿美さんと柳ケ瀬に小さな店を開いた。3年後、新たな展望を胸に羽根町へ移転。広々としたスペースに、思う存分、糸や作品が置けるようになった。
1年程前からは頼もしいスタッフも加わった。見本作品などを編むニッターや、編み物講師の経験を持つ桂木さん。柔軟な発想、確かな技術、作り手の目線を持つ彼女の登場で、ソフト面も充実。
「この店で、ものづくりが好きなお客様に新しい角度からいろんな提案をしていきたいですね。まさか、と思ってもらえるような糸の組み合わせとか」。高見さんは優しく微笑みながら続ける。「今、並んでいるのはすべてAVRILの糸です。でも近い将来、また現場に戻って、SAIRIのオリジナル糸を作り出したい」
Photo
- 店頭の壁には量り売り用の糸がずらり
- 「毎日、作りたい糸が変わりますね。たとえば、その日の天気やひいきの野球チームの勝敗でも」と笑う高見さん
- 並べた太い糸を細い糸で編み上げ、首周りのボリューム感をすっきりさせたマフラー。柔軟な発想とは、まさにこのこと。ピカソの織り風マフラー/キット¥1,800、作品¥3,500
- 手前は太さや染め色が次々に変化するキャットテール。この糸とつむぎをざっくりと編むアクセサリーが好評
- 糸選びは目が疲れていない午前中に。迷ったときは最初に手にしたものを選ぶのがポイントだそう
- 火、水、金曜日は予約制で編み方のアドバイスを行っている。ワンポイント講座は30分¥525、初心者は1時間¥840(2時間まで)。その他、初心者向けの手織り講習や、若手作家stairwayによるワークショップも開催
糸の店 SAIRI[イトノミセ サイリ]
- 〒500-8834 岐阜市羽根町8 高見ビル1F
- TEL.058-264-2533
- 営業時間◇11:00~19:00
- 定休日◇水曜日・第3木曜日
- http://www.geocities.jp/sairi_2004