柳ヶ瀬日の出町通りから北へ入った小路に、ずらりと並ぶ下駄や草履に目を奪われる店がある。着物、浴衣用から、舞台やお茶席用まで、多種多様な和装履物をそろえる専門店「末広屋」だ。
昭和2年に先代が柳ヶ瀬小柳町で開業。新岐阜百貨店にも2号店を出したが、時代の流れにより両店舗とも閉店。「本物の履物の良さを伝えたい」という2代目の増田さん夫妻の思いと、客からの励ましにより、柳ヶ瀬にて再出発を決めた。
店主の増田寿さんは、高校卒業後、浅草の老舗履物店で3年間修行。岐阜に戻ってから現在まで、履物一筋50年だ。
末広屋は、好みの台と鼻緒を選んで、その場ですぐに挿げてもらえる昔ながらの履物屋。台には、桐や杉を使い、鼻緒には、さまざまな柄の綿をはじめ、鹿や鰐の皮、ビロードなど数え切れないほどの種類を用意している。台と鼻緒の組み合わせを大切にする寿さんは、多くの履物を見てきた目から、より『粋』な履物を提案してくれる。
下駄や草履には明確なサイズがないため、客の足の特徴を見極めながら、長年の経験と腕を頼りに鼻緒を挿げる。「足にやさしい一足を作りたいね」と寿さん。鼻緒が足に当たる部分を何度も調節するなど、常に履く人のことを第一に考える。
購入後の修理や調整を安心して任せられるのも、職人がいる店ならではの魅力だ。愛着ある履物を末永く使えるようにと、どんな些細な相談にも丁寧に対応してくれる。「日本で生まれた伝統的な履物文化をこの先も残していきたいよね」と妻の淑江さんと顔を見合わせる。
丁寧な手作業から生まれた本物の履物。この夏、とっておきの下駄をカランコロンと響かせながら、柳ヶ瀬界隈を『粋』に歩いてみよう。
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- 1.好みの台と鼻緒を自由に選ぶことができる
- 2.金槌で鼻緒の端を平らにし、穴に通したら裏側で挿げる。前緒と後緒を微調整しながら、素早い手つきでその人にぴったりの一足を仕上げる。手前の道具は、鼻緒を挿げる時の必需品
- 3.「本物の履物の良さを知ってもらいたいね」と話す店主の増田寿さんと妻の淑江さん
- 4.寿さんが提案する粋な履物。右から桐白木舟型(防水加工)/¥7,500、竹張舟型/¥10,000、天黒塗舟型/¥7,500
- 5.この夏おすすめのオリジナルの履物や、淑江さんが選ぶ和服に合う鞄や16本骨雨傘などが並ぶ
- 6.再出発を決めた柳ヶ瀬日の出町の新店舗は、明るくあたたかな雰囲気に包まれている
末広屋[スエヒロヤ]
- 〒500-8876 岐阜市日の出町1-14
- TEL.058-262-2586
- 営業時間◇10:00~18:30
- 定休日◇木曜日
- ホームページ http://www.geta-suehiro.com/