昭和の面影を残す商店が並ぶ徹明町通りに、和菓子屋「岐阜 岡女堂」はある。戦後まもなく、まだ活気のなかったこの場所に、初代の青山盛市氏が大阪で学んだ甘納豆の店を構え、今年で創業65年を迎えた。
店内のガラスケースには、色とりどりの甘納豆がずらり。人気の大納言や金時、金色のとうろくに粒の大きなおたふく、鶯色が鮮やかな青えんどう。栗や渋皮栗、さつまいももある。
創業以来変わらない製法を受け継ぐのは、3代目の青山邦裕さんと妻のまち子さん。素材は北海道産にこだわり、水は長良川の伏流水を使用。豆を一晩水に浸し、皮が程よいやわらかさになるまで炊いたら蜜漬けに。翌日、濃くした蜜に再び漬け、もう一晩置く。最後に中まで火を通し、仕上げ用のさらに濃い蜜に漬けて、グラニュー糖をまぶす。
4日間かけて丁寧に作られた甘納豆は、口に入れた瞬間、うっすらとした糖衣が優しく溶け出し、やわらかな皮に包まれた豆から蜜の甘みがじんわりとあふれ出る。邦裕さんは、季節によって水に浸す時間や温度、蜜の濃さを変える。「炊き上がりのタイミングは、勘の世界。蜜で身が締まることを想定して、炊く時間を見極めます」。長年の経験が、絶妙な食感の決め手となっているのだ。
店番をするのは母の志津子さん。「長く続けてきて嬉しいことがいっぱいありました。お母さんが買っていかれた甘納豆を食べた娘さんが自分でも買いに来てくれたりね。だから味は落としたらいかんと思うんです」。父である盛市さんの姿を見て育ち、甘納豆一筋の人生を歩んできた志津子さん。母と力を合わせ伝統の味を継ぐ3代目夫婦。多くの人に愛される味を、家族で脈々と守り続けている。
Photo
- 1.「手間もかかるし難しいけど、お客さんにおいしかったと言ってもらえると嬉しいから」と邦裕さん
- 2.お年賀にと注文が殺到する箱入りも。大納言と栗など、好きな組み合わせが選べるのもうれしい
- 3. 作り方も素材も創業当時のままの甘納豆。一度食べたら忘れられない味にファンも多い。甘納豆/100g ¥260
- 4.左から妻のまち子さん、母の志津子さん、店主の邦裕さん
- 5.4日間かけて蜜を染み込ませた金時。グラニュー糖をまぶし、しっとりとつやが出るまで乾燥させる
- 6.年配の方が入りやすいようにと、カラカラと横に開ける扉をあえて残している
- 7.第17回全国菓子大博覧会では名誉功労賞、第18回には大臣賞など、数々の賞を受賞
- 8. 出来上がった甘納豆の選定は、志津子さんが担当。壊れや堅さのあるものを手作業で除いていく
岐阜 岡女堂[ギフ オカメドウ]
- 〒500-8879 岐阜市徹明通1-8
- TEL.058-263-0471
- 営業時間◇8:30~20:00
- 定休日◇第4木曜日、最終日曜日