ディズニーの底力を見た!
最高に笑える自虐的セルフ・パロディー。
ようこそ、あうん劇場へ!
今回ご紹介する作品は、アニメの世界から現実の世界に追放されたプリンセスが巻き起こす大騒動を描いたファンタジック・コメディー『魔法にかけられて』です。ディズニーが製作した映画なのですが、これをディズニーアニメのファンにおすすめしてよいものかどうか…。
物語はアニメーションで始まります。
魔法の王国アンダレーシアで動物たちと暮らす美しい姫ジゼルは、エドワード王子との結婚式の当日、邪悪な魔女ナリッサに騙されて井戸に突き落とされてしまいます。そして彼女が辿り着いたのは、アニメの世界ではなく、なんと現実のニューヨーク!
初めて見る“実写”の世界で途方に暮れていたジゼルは、弁護士のロバートに助けられ、彼のアパートに転がり込みます。やがて、彼女を追ってアニメの世界からニューヨークにやって来たエドワード王子、リスのピップ、魔女ナリッサ、さらにはロバートまでもを巻き込み、大騒動へと発展していきます。はたして、ジゼルは元の世界へ戻ることができるのでしょうか?
「白雪姫」や「眠れる森の美女」のような、ディズニーの古典的なアニメの世界からやってきたジゼル。服装はもちろんフリフリのお姫様ドレス。その奇抜な“コスプレ”は現実世界で浮きまくり。さらにアニメの世界そのままにハイテンションな彼女は相当な“痛い人”。ナルシストで能天気なエドワード王子の天然ぶりも必見です。
そしてさらに楽しいのが、アニメの世界とその“お約束”が全く通じない現実とのギャップ。アニメの中でジゼルが歌うと可愛い動物たちが集まってきます。現実世界で同じように歌ってみると、集まってきたのは汚いネズミやハトばかり。おしゃべりだったリスのピップは人間の言葉が話せなくなってしまい、必死にジェスチャーをするも全く伝わらず。そんな自虐的なギャグのオンパレードに抱腹絶倒です。
でも笑えるだけで終わらせないのがディズニー。永遠の愛を信じるジゼルと、超現実主義でバツイチの離婚専門弁護士ロバート。正反対の恋愛観を持つ二人が互いに歩みよっていく過程に、ちょっぴり感動させられます。
ディズニーがこれまでに築いてきた自らのイメージを逆手にとり、「とにかくおもしろい映画にできれば何でもOK」という完全な開き直りが気持ちいい。そして、アニメーション、アドベンチャー、ミュージカル、ロマンス、パロディーなど、欲ばりなぐらいに盛り込まれた要素を見事にまとめ上げた手腕。さすがはディズニーというべき圧巻の完成度です。
作品紹介
「魔法にかけられて」
- Enchanted
- 2007年/アメリカ/107分
- 監督 ケヴィン・リマ
- 出演 エイミー・アダムス/パトリック・デンプシー/ジェームズ・マースデン/スーザン・サランドン