シチュエーション・スリラーの傑作!
アイデアひとつで映画はまだまだおもしろくなる!
ようこそ、あうん劇場へ!
近年、映画業界はネタ不足と言われています。ヒット作の続編だったり、ドラマやコミックの映画化だったりと、なんだか似たような作品ばかり。
しかし年に数本、思わず膝を打つようなフレッシュな作品がひょっこり登場します。今回ご紹介する作品もそんな稀な一本。シチュエーション・スリラーの傑作『フォーン・ブース』です。なんと、全編ほぼ電話ボックスの中だけで展開していくのです!
自称一流パブリシストのスチュ。彼は口先だけで世間を渡ってきたような業界人。契約を取るために嘘をつき、妻がありながら売り出し中の女優を狙っている軽薄な男です。そんな彼がニューヨーク8番街にある電話ボックスで、突然鳴り出したベルに反応して、思わず受話器を取ってしまいます。電話口からは「電話を切れば、お前を殺す」という不気味な男の声。そして胸には赤外線の標的マーク。スチュは訳も分からぬまま、男の脅迫によって危険なゲームに巻き込まれていきます。
開始早々、街角にある電話ボックスが密室に早変わり。スチュと謎の男による電話での攻防戦がスリリングに展開します。“電話ボックスから離れられない”というアイデアひとつで勝負したようなこの作品は、観客を飽きさせない見事な脚本と、スチュを演じるコリン・ファレルのハイテンションな演技もあって、見応えたっぷり!
こういったシチュエーション(ワン・アイデア)ムービーは、作家の独創性が感じられて個人的に大好きです。この他には、密室に鎖で繋がれた二人の男が強制的に恐ろしいゲームに参加させられる『SAW』や、6人の男女が立方体で構成された迷宮から脱出を試みる『CUBE』などが有名で、なかなかの秀作ぞろいです。
この手の作品は低予算で作られているものが多いよう。しかし、逆にそれが良い結果を生んでいるのだと思います。例えばロケができないので撮影場所は倉庫の中。場面が変わらないと観客が飽きてしまうので、ストーリー展開や会話にもひと工夫。カメラアングルにもこだわって…という具合に、「お金はないけど努力と才能で勝負してやる!」という貧乏苦学生的なハングリー精神に満ちていて、メジャー大作にはないおもしろさがあります。
こうやって書いていると、なんだか自分でもおもしろいプロットが作れそうな気がしてきました。せっかくなのでやってみましょう!
男が目を覚ますと、そこは真っ暗なドラム管の中。
しかもガムテープで口を塞がれ、手足は縛られている。
わずかに光が差し込む小さな穴から外が見える。
どうやら移動しているトラックの荷台にいるようだ。
しかし、なぜこのような状況になったのかは、まったく記憶にない。
音を立ててみるが反応がない。
その時、運転手が無線で会話する声が聞こえてきた。
-「あと30分でゴミ処理場だ」
このままでは男はドラム管ごと捨てられてしまう!
タイムリミットは30分。
男はこの危機的な状況から抜け出すことができるのだろうか!!
う~ん、いまいち!
やっぱり優れたアイデアはそう簡単に浮かんできませんね(苦笑)。
フォーン・ブース
- Phone Booth
- 2002年/アメリカ/81分
- 監督 ジョエル・シューマカー
- 出演 コリン・ファレル/フォレスト・ウィテカー/ラダ・ミッチェル/ケイティ・ホームズ ほか