自由奔放な女の子に恋をした
草食系男子のビターでスウィートな500日
ようこそ、あうん劇場へ!
巷に急増している“草食系男子”。これは〈ガツガツと異性を求めるのではなく、異性と肩を並べて草を優しく食べるような雰囲気を持つ男性のこと〉を指すそうです。今回紹介する作品は、そんな草食系の男の子が一風変わった女の子に恋をしたことで経験するビターな500日間を描いた『(500)日のサマー』です。
〈1日目〉グリーティングカード会社で働くトムは運命の恋を信じる20代の青年。ある日、会社のボスが新しいアシスタントを連れてくる。彼女の名前はサマー。トムは一目で恋に落ちた。
〈4日目〉エレベーターの中で彼女とばったり。トムのヘッドフォンから漏れる音を聴いて「私もザ・スミスが大好き」とほほ笑むサマー。好きな音楽をきっかけに意気投合するふたり。
〈28日目〉カラオケパーティーの席でサマーに「彼氏はいるの?」と質問。彼女の答えはノー。「恋人なんて欲しくない。恋なんて絵空事よ」と彼女は言う。そして「友達になって」と、サマーはトムにキスをする。
〈34日目〉ふたりはIKEAで夫婦ごっこを楽しむ。けれど「真剣に付き合う気はない」と言うサマー。それに対してトムは「気楽な関係でいい」と答える。片想いと両想いの間に果てしなく広がるグレーゾーン。トムの苦悩が始まる…。
運命の恋を信じる男の子と信じない女の子という全く正反対のふたりの恋愛を描いた作品なのですが、冒頭でナレーターが「最初に断っておくが、これはラブストーリーではない」と、元も子もないことを言ってしまいます。ラブストーリーでないなら、いったい何なのか?
この映画、よくある恋愛映画とは少し違ったところがあります。それは、物語が一貫してトムによる男性目線で語られていることです。トムの気持ちは饒舌に語られるけれど、サマーが思っていることは全く説明されません。相手の気持ちがわからないというのが、妙にリアルなのです。しかもサマーは何を考えているのかさっぱりわからないエキセントリックな女の子。そんな女の子に振り回される男の愚かさを描いた本作は、ひとつの恋を通して自分自身を見つめていくトムの成長物語だと考えるのが正しいのかもしれません。
それと、見ていて驚かされるのはそのセンスの良さ。時系列をシャッフルしながら進むストーリー展開や、効果的に使用されるアニメーション、ウイットに富んだセリフの数々。さらに劇中に使われている音楽、ファッション、インテリアのいずれも、とってもオシャレなのです。
また、そのセンスの良さはキャスティングにも発揮されています。トムを演じるジョセフ・ゴードン=レヴィットはまさにはまり役で、ロマンティックで繊細な青年を好演しています。そして、自由奔放なサマーを演じたズーイー・デシャネル!なんて言うか、かわいすぎます!彼女は映画・音楽・ファッションとさまざまな業界で活躍する個性派女優です。ゴージャスな美女というわけではないのですが、自然体でとってもキュート。独特のオーラを放つ彼女はまるでサマーそのもの。皆さんもズーイーの虜になること間違いなしです!
(500)日のサマー
- (500) Days of Summer
- 2009年/アメリカ/96分
- 監督 マーク・ウェブ
- 出演 ジョセフ・ゴードン=レヴィット/ズーイー・デシャネル/ジェフリー・エアンド/クロエ・グレース・モレッツ ほか